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五番街ティファニー
冬のニューヨークは、三方が海に囲まれている関係で大変寒い。
蒸気の配給管が地下に埋設されており、
ところどころ道路上にその蒸気が吹き出している。
この時期の風物詩だ。
1991年(平成3年)の2月、
セントラルパーク近くの五番街にある、ティファニー本店にいた。
当時、大変人気のあった
銀のオープンハートネックレスを
団体のお客様がお土産として30個買いたいと言われ案内したときのこと―――
この商品は日本でもなかなか手に入りにくく、
ニューヨーク本店でも数を制限していた。
そこで、JTBニューヨーク支店からティファニーに
トラバーユした旧知のA女史に頼もうと、
社員通用口でガードマンに厳重なチェックを受け、4階の外商部を訪ねた。
しばらくして、水色の小さな箱に白いリボンをかけた30個を受け取り、ホテルに戻った。
夕食を済ませて部屋にいると、
リリーンとA女史から電話が入った。
「北河さん!大変、
銀と金を間違えて包装したらしい。
売り子とガードマンをそちらへ向かわせます。」
お客様と待機していると、ピストルを越にした映画から抜け出してきたようなガードマンと泣きそうな顔の女性の売り子が部屋に来て、恐縮しながら小箱を開いて点検しだした。
何と30個中27個が金だった。
金は銀の約10倍の売価だった。
ティファニーの売り物は連日、日本人客で2重3重の人垣ができるほど盛況。その中での勘違いだったようだ。
最近のA女史からのクリスマスカードには、
バブルがはじけた後は日本人客のブランド品指向も薄れ、堅実になってきており、景気が良くないと書かれていた。
日本人旅行客の価値観も多様化し、
流行に惑わされない独自の楽しみ方を身に着けてきている。
最近のニューヨークでは瓶の王冠をネックレスにしたものが大流行だとか。
変われば変わるものだ。
旅行は続けられ、
その後の冬のカナディアンロッキーを体験するため、
カナダのトロントを経由、カルガリーに入った。

バンフスプリングホテルに1泊した翌朝、
ホテルから見た朝日に映えピンク色に染まった山並みは、
夏とは違った凛とした趣きでわれわれを迎えてくれた。
寒い時に寒い所へ旅をする―――、
これまた旅の醍醐味だ。
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